日本でApple Payが普及しない3つの理由
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「Apple Payの仕組みはセキュリティが高い」ということをそこかしこの記事で読み、いまひとつどこが高いのかわからなかったので、調べていました。
Apple - Apple Pay (英語)
仕組みが本当によくできているんですよ。MDESやトークン化や暗号化などを使っていましてね。
「Apple Payのセキュリティすげぇ!」なんて感心しながら、記事のネタ集めに興じていました。
しかし冷静になって考えてみると、そもそもApple PayはiPhone6、iPhone6 Plusが発売されるからといって、すぐに日本では使えないんです。ましてやアメリカでさえも10月から使えるとのこと。
しかも調べていくうちに知ったのは、Apple Payがセキュリティを売りにする背景には、クレジットカードの不正取引が横行しているということでした。
「アップル決済」を侮るな 日本でも一気に普及する可能性大 日経トレンディネット
実は、海外では、クレジットカードや銀行のデビットカードなどにかかわる不正取引が巨額になっている。(中略)磁気ストライプからの情報抜き取り、決済端末からの情報横取り、カード表面からの情報搾取、電子商取引サイトからの情報漏洩などリスクは拡大する一方で不正利用額は巨額に膨れ上がっている。これらを一掃するには非接触型のICチップ(NFC)に移行するしかないとカード決済のIC化が進んできた。
当初「Apple Payは2020年の東京オリンピックまでに一気に普及する」なんていうタイトルで記事を書こうとしていました。
これは間違いです。
日本でApple Payは普及しそうにありません。
理由を以下に挙げます。
①クレジットカードの不正取引が少ないのでiPhoneユーザがメリットを感じない
アメリカの企業「スクエア」の法務渉外担当役員であるダナ・ワグナー氏が下記のようにコメントしています。
(スマートフォン決済を簡単に行うことができる「Squareリーダー」を販売しています)
※スクエアは、ドラクエ・FFのスクエニとは関係ないです
インタビュー&トーク - 米スクエアにとってApple Payは脅威なのか:ITpro
日本において特筆すべきことがある。それは、圧倒的に不正利用が少ないという点だ。
我々は位置情報やアルゴリズムを駆使して、24時間体制でシステムおよびアナリストが不正使用をあぶり出す体制を敷いている。
少しでもおかしい動きがあったら警告が出る仕組みだが、日本の場合、不審で疑わしい取引件数が圧倒的に少ない。日本は素晴らしい。
ダナ・ワグナー氏がいうように、諸外国に比べて日本は圧倒的にクレジットカードの不正利用が少ないんです。
誇らしいことですよね。
しかし、裏を返すと高いセキュリティを誇るApple Payのメリットが得られないということになります。
クレジットカードを不正に利用されることなんてほとんどない、現金決済に慣れている、iPhoneユーザにとってApple Payは(覚えるのが面倒な)新しい決済方法のひとつにすぎないということです。
これでは普及しないですよね。。。
②おサイフケータイの利便性を知りすぎている
おサイフケータイという言葉を聞いて久しいです。
コンビニにいくと「シャリーン♪」なんて耳ざわりのいい音が聞こえてきます。
残高を気にしないといけないものの、小銭を持ち歩かなくて済むので便利ですよね。(使ったことないんですけどね)
おサイフケータイが普及し始めて今年で10年。
手軽に「シャリーン♪」できることを知っている日本のiPhoneユーザに、指紋認証があるとはいえ、Apple Payを積極的に使ってもらうのは至難の業でしょう。
Apple Payの普及はほど遠いです。。。
③東京オリンピック効果を狙うも、外国ではiPhoneは高級品
2020年の東京オリンピックに向けて、経済産業省はクレジットカード決済をしやすくするよう市場に働きかけていくそうです。
クレジットカード決済の健全な発展に向けた研究会 中間報告書 平成26年7月 経済産業省
↑リンク切れ
やった!外国の方がいっぱい来日して、なんだかApple Pay普及しそう!
しかし外国の方は、iPhone使用率が低いんです。
なぜなら機種代金が月収の2~3倍(!)の値段になるから。
Appleが廉価版iPhoneを発売しなければならない理由とは? - たのしいiPhone! AppBank
月収に占める機種代金(iPhone5 16GB)の割合
インド 約300%
インドネシア 約250%
中国 約240%
ブラジル 約190%
日本人がAndroidよりiPhoneを選ぶ本当の理由 - NAVER まとめ
にもあるように、日本のiPhoneの値段が安いというのもありますが、日本ではAndroid携帯が高いというのもあるようです。
iPhone5Cのような廉価版は、iPhone6シリーズにはありません。5C自体あまり売れていなかったようなので、廉価版は作らないという決断になったのでしょう。
iPhoneをもっている外国の方は少数派なので、いくらオリンピックのために来日されても、Apple Payが普及するにはインパクトが小さいです。。。
まとめ
東京オリンピックによる決済関連への影響は、東京近郊だけやたらとクレジットカード決済が進んでいくことですかね。
上に挙げた「クレジットカード決済の健全な発展に向けた研究会 中間報告書 平成26年7月 経済産業省」をみてみると
クレジットカードの国内での利用状況を見ると、都市部と地方部で利用率に差があり、特に高齢者の多い地方部での利用が少ない傾向が見られる。
とあります。
東京オリンピックに向けて、外国人の利便性を高めるためにもクレジットカード決済の整備を進めるでしょうね。
東京近郊では、そこらじゅうの店舗に乱立する決済端末。その反面、地方部では現金決済のままという状況が顕著になるかとおもいます。
話を戻します。
Apple Payのセキュリティは非常に高いです。
しかし、あくまで不正利用の横行する国での話であり、日本には適用されません。
日本のiPhoneユーザがApple Payから受けるメリットは「決済のスピードが速くなる」程度です。
レジでクレジットカードを読み取ってもらってサインする、もしくは端末にパスワードを打ち込むという作業がなくなるぐらいです。
メリットがこれだけじゃ普及はしないでしょう。そもそもApple Payは日本で開始されないかもしれません。
とはいうもののAppleの動向次第では、Apple Payは普及しやすい仕様に変更されるかもしれません。
Appleらしい変化を楽しみにしていましょう。
そして本日はiPhone6、iPhone 6 Plusの発売日です。
明日以降、さまざまな意見、レビューなどが飛び交うことでしょう。楽しみです!